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【2025年10月13日】今日は<菊花開(きくのはなひらく)>

目次

🌼七十二候「菊花開(きくのはなひらく)」とは?

「菊花開(きくのはなひらく)」は、二十四節気の「寒露(かんろ)」の第二候(だいにこう)。
おおよそ10月13日ごろから10月17日ごろにあたります。
読み方は「きくのはなひらく」、意味はそのまま──
“菊の花が咲くころ”

秋の空気が澄み渡り、朝晩の冷え込みがぐっと増してくるこの時期、
日本各地で菊が咲き誇り、
その凛とした香りが季節の深まりを告げます。

「菊」は日本の花文化の中でも特別な存在。
古くから高貴・清浄・長寿の象徴として愛されてきました。
その花が満開を迎える「菊花開」は、
まさに**“秋の花のクライマックス”**ともいえる時期なのです。


🏵️「菊」はどんな花?その歴史と象徴

🌿1. 中国から伝わった“高貴な花”

菊の原産は中国。
紀元前から薬草として重宝され、「延命長寿の花」として尊ばれてきました。
「九月九日(重陽の節句)」に菊を飾り、
菊の花びらを浮かべた酒を飲む「菊酒(きくざけ)」をたしなむ風習は、
中国の王族や文人から始まったものです。

それが奈良時代に日本へ伝わり、
平安貴族たちはその高雅な美しさに魅了されました。
『源氏物語』や『枕草子』にも菊の名が登場します。

やがて鎌倉時代、後鳥羽上皇が菊を愛し、
その花を**皇室の紋章(十六弁八重表菊)**としたことで、
「菊=高貴・日本の象徴」としての地位を確立します。
つまり菊は、“皇室の花”でもあり、“日本の心”の花でもあるのです。


🍶2. 「菊の節句」と長寿の祈り

毎年9月9日は「重陽の節句(ちょうようのせっく)」、別名「菊の節句」。
五節句の中でもっとも“陽”の数字(九)が重なる縁起の良い日です。
この日に菊酒を飲み、菊を眺め、長寿を願いました。

古くは、前夜に菊の花に真綿をかぶせて露を吸わせ、
翌朝その綿で身体をぬぐう「被綿(きせわた)」という風習もありました。
菊の露に宿る“清浄の力”で邪気を払い、若さを保つ──
自然とともに生きる日本人らしい、
とてもロマンチックな習わしですね。


🌼3. 「菊花開」はどんな季節?

「菊花開」のころ、季節は秋の真ん中から晩秋へと差しかかっています。
日中はまだやわらかい陽射しに包まれますが、
朝晩はひんやりと冷たい空気が流れ、
草花には朝露が宿り、虫の声がかすかに響きます。

山は色づき始め、
庭や公園では白・黄・紫・ピンクの菊が咲き競います。
まるで秋が持つ色彩のすべてを凝縮したような光景です。

菊の花が持つ“整然とした美しさ”は、
秋の空気の澄み切った静けさにぴったり。
派手ではないけれど、どこか芯のある美──
それが「菊花開」の季節の魅力です。


🌸4. 菊の種類と名前の美しさ

菊は種類が非常に多く、
世界では2万種以上、日本だけでも数千種が栽培されています。
ここでは、日本人に馴染み深い代表的な菊をいくつかご紹介します。

種類特徴印象
大菊(おおぎく)直径20cmを超える大輪。花びらが幾重にも重なる。気高く堂々とした印象。品評会で人気。
中菊(ちゅうぎく)花壇や墓花に多く用いられる標準的な菊。落ち着いた美しさ。家庭的な温かみ。
小菊(こぎく)小ぶりで可憐。仏花や生け花にも重宝される。優しく、控えめな美。
嵯峨菊(さがぎく)細い花びらが放射状に広がる京都の名花。雅で上品。芸術的な印象。
江戸菊(えどぎく)江戸時代に生まれた花弁の動きが特徴の園芸菊。華やかで粋。江戸の美意識を感じる。

菊の花言葉は「高貴」「清浄」「真実」「長寿」など。
中でも白菊は「真実」「誠実」、黄色は「高貴」「高潔」、ピンクは「甘い恋」。
一輪一輪に品格があり、まるで人の心のように繊細です。


🌕5. 菊と日本文化:詩歌・芸術・信仰

📜和歌に詠まれた菊

平安時代の歌人たちは、菊に秋の清らかさと哀愁を見ました。
たとえば『古今和歌集』にはこうあります。

「白露に 風の吹きしく 秋の野は
つらぬきとめぬ 玉ぞ散りける」
─凡河内躬恒(おおしこうちのみつね)

露とともに散る菊の花を、玉がこぼれるようだと詠んだ一首。
儚さの中に美を見いだす日本人らしい感性が表れています。

🎨絵画と文様

日本画や着物の文様にも、菊は欠かせません。
たとえば尾形光琳の「菊図屏風」や、琳派の工芸品にも多く描かれています。
また、菊は「不変の美」「気高さ」の象徴として、家紋にも多用されます。

「菊花紋」は皇室の紋章でもあり、
十六弁の花びらが整然と広がるデザインは、日本の美意識を象徴する形といえるでしょう。


🪷6. 菊の香りと癒やしの力

菊は見た目の美しさだけでなく、香りにも癒やし効果があります。
古くから「菊花茶(きっかちゃ)」として飲まれ、
中国では今も人気の健康茶です。

菊花茶の効果

  • 眼精疲労の緩和
  • 頭痛・のぼせの鎮静
  • 抗酸化作用(アンチエイジング)
  • 風邪予防、免疫力アップ

白菊を乾燥させたものをお湯に浮かべ、蜂蜜を少し加えると、
ほんのり甘く、花の香りがふんわり漂います。
夜のリラックスタイムにぴったりの一杯です。


🧘‍♀️7. 「菊花開」のころの過ごし方

🍂1. 秋を五感で楽しむ

「寒露」から「菊花開」にかけては、空気も乾いて澄み、
視覚・嗅覚・味覚のすべてが冴える時期です。
花を眺め、香りを感じ、旬の食材を味わう──
まさに五感で秋を感じられる贅沢な季節。

特におすすめは菊花祭り菊花展
奈良・唐招提寺、東京・湯島天神、京都・平安神宮などでは毎年見事な菊が展示されます。
品種改良を競うだけでなく、「花で語る芸術」としても見応えがあります。

🛀2. 菊湯に浸かる

この時期の風習として、「菊湯(きくゆ)」があります。
湯船に数輪の菊を浮かべると、香りが心と体を癒やします。
冷えが気になり始める秋の夜にぴったり。
菊の香気成分にはリラックス効果と抗菌作用があり、
昔は邪気払いの意味も込めて行われていました。

✍️3. 自分の“秋”を記す

秋の深まりは、心を静めるのに最適。
日記や手帳に、今年の出来事や感謝の気持ちを書いてみましょう。
菊が「長寿」や「永続」を象徴するように、
“続ける力”を育むにはぴったりの時期です。


🌾8. 農と自然のリズム

「菊花開」は、稲刈りがほぼ終わり、
農村が収穫の喜びに包まれる時期でもあります。
お祭りや神事では菊を供え、豊穣に感謝します。

また、寒露の冷気が土に降りることで、
作物が次の命を育む準備を始めます。
自然界では「生から静へ」の転換点。
生命が一度“呼吸を整える”時期なのです。


🌙9. 菊と月の共演

「菊花開」の頃は、月がますます冴え渡ります。
中秋の名月から半月後の「十三夜」には、
“栗名月”または“豆名月”として再び月見が行われます。
この時期に咲く菊は、夜の光に照らされて一層美しく、
「月と菊」は日本の秋の美の象徴。

月明かりに照らされる白菊を眺める時間は、
まるで静寂と永遠を手のひらに乗せたような心地です。


💫10. 菊の教え:「静かな強さ」

菊は、華やかな桜や艶やかな牡丹と違い、
派手ではありません。
けれど、冷たい風にも負けず、秋の終わりまで堂々と咲き続けます。

その姿は、まさに**“静かな強さ”**。
人生の晩秋にも、自らの色で凛と咲く。
それが菊の花の哲学です。

「菊花開」の季節は、そんな“心の姿勢”を教えてくれます。
──誰かに見せるためではなく、自分の中に咲く美しさを大切に。


🍁まとめ:「菊花開」は心を澄ませる季節

・秋の花が咲き誇り、空気が透明になるころ
・静けさと気高さが調和する、まさに“秋の極み”
・自然と人がともに整う、美しい時間帯

「菊花開」とは、
自然が“静かに咲く力”を私たちに見せてくれる季節です。

派手ではなくても、美しい。
冷たくても、あたたかい。
そんな日本の秋の精神が、この候に凝縮されています。

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