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【2024年6月26日】<菖蒲華(あやめはなさく)>

「菖蒲華(あやめはなさく)」は、日本の暦における七十二候の一つで、5月後半から6月初旬にかけての時期を指します。この七十二候は、古代中国の暦法から伝わったもので、一年を72の小さな季節に分け、それぞれに自然現象や動植物の変化を表す名称が付けられています。「菖蒲華」はその中の一つで、この時期には菖蒲(しょうぶ)やあやめ、かきつばたなどの花が咲くことを意味します。

菖蒲、あやめ、かきつばたの違い

まず、菖蒲(しょうぶ)、あやめ、かきつばたは、日本では初夏を代表する花として親しまれていますが、それぞれ異なる植物です。以下にそれぞれの特徴を示します。

  1. 菖蒲(しょうぶ)
    • 学名: Acorus calamus
    • 特徴: 菖蒲は湿地や水辺に自生する多年草で、香りの良い葉を持ちます。日本では端午の節句(5月5日)に、邪気を払うために菖蒲湯に浸かったり、菖蒲の葉を飾ったりする風習があります。
    • 花: 菖蒲の花は地味で、あまり目立ちません。花よりも葉が注目される植物です。
  2. あやめ
    • 学名: Iris sanguinea
    • 特徴: あやめは乾いた土地を好み、5月から6月にかけて紫や青、白の美しい花を咲かせます。花びらには特徴的な網目模様があります。
    • 花: 花は大きく、鮮やかな色彩が特徴です。観賞用として庭園などで広く栽培されています。
  3. かきつばた
    • 学名: Iris laevigata
    • 特徴: かきつばたは湿地や池のほとりに生える多年草で、花びらの根元に白い斑点があります。5月から6月にかけて紫や青の花を咲かせます。
    • 花: 花はあやめに似ていますが、水辺に生えることが多いのが特徴です。

七十二候について

七十二候は一年を24の節気に分け、さらにそれぞれの節気を3つの候に分けたものです。中国から伝わったこの暦法は、日本の気候や風土に合わせて独自にアレンジされました。以下に七十二候の基本構造を示します。

  • 節気: 二十四節気は一年を約15日ずつに分けたもので、立春、雨水、啓蟄、春分、清明、穀雨、立夏、小満、芒種、夏至、小暑、大暑、立秋、処暑、白露、秋分、寒露、霜降、立冬、小雪、大雪、冬至、小寒、大寒があります。
  • : 各節気をさらに3つの候に分け、約5日ごとに季節の移り変わりを表します。これが七十二候です。

「菖蒲華」は小満(しょうまん)の末候にあたり、具体的には5月25日頃から5月30日頃までの時期です。この時期は、春から夏への移行期であり、草木が一層青々と茂り、花々が咲き誇る季節です。

日本における「菖蒲華」の文化的背景

「菖蒲華」の時期は、ちょうど田植えのシーズンと重なります。日本の農村では、この時期に田んぼに水を引き、苗を植える作業が行われます。田んぼの風景に菖蒲の花が彩りを添え、豊かな自然の恵みを感じることができます。

また、端午の節句に菖蒲を用いる習慣からも分かるように、菖蒲は古くから日本人にとって特別な意味を持つ植物でした。菖蒲の葉には薬効があり、邪気を払う力があると信じられてきました。このため、端午の節句には菖蒲湯に浸かることで無病息災を祈る風習が現在でも続いています。

菖蒲華の現代的な意義

現代においても、菖蒲華の時期は季節の移ろいを感じる大切な時期です。庭園や公園、神社仏閣などでは、菖蒲やあやめ、かきつばたが美しく咲き乱れ、多くの人々がその美しさを楽しみに訪れます。特に、東京都の堀切菖蒲園や京都府の大田神社のかきつばたなど、名所として知られる場所では、毎年多くの観光客が訪れます。

また、この時期は梅雨入り前の穏やかな気候が続くため、アウトドア活動や旅行にも適しています。家族や友人とともに自然の中で過ごす時間は、日常のストレスを解消し、心身のリフレッシュにつながります。

結びに

「菖蒲華」は、古代から続く自然観察の知恵と、それを基にした季節の表現方法の一つです。菖蒲やあやめ、かきつばたの花が咲き誇るこの時期は、自然の美しさや生命の力強さを感じることができる貴重な時間です。また、端午の節句に見られるように、菖蒲に込められた文化的な意味合いも非常に深いものがあります。

現代においても、こうした伝統的な季節の表現を大切にしながら、自然との調和を感じ、季節ごとの風物詩を楽しむ心を持ち続けることは、日本の豊かな文化を継承し、日々の生活に彩りを添える大切な要素です。「菖蒲華」の時期には、ぜひ身近な自然に目を向け、美しい花々の咲く風景を楽しんでみてください。

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